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「きこえにくさ」と「仕事」|ある企業での合理的配慮の実例紹介

こんにちは、KIKOE LIFEです。

先日、大学の障害学生支援室主催の研修会に参加しました。主テーマは「発達障害のある学生のキャリアについて考える」だったのですが、聴覚障害者に関する雇用の状況や合理的配慮の実例についても報告があったので、いくつか抜粋してお伝えします。

障害者雇用の現状

研修会では、2企業から障害者雇用の現状について報告がありました。

1社目の会社情報

・グループ企業あわせて従業員は約4200名(うち障害者は700名以上)

・特例子会社の従業員は211名(うち障害者は178名)

特例子会社とは、「障害者雇用促進法」の規定により厚生労働大臣の認可を受けて、障害者雇用において親会社の一事業所として見なされる子会社のことです。

1社目の障害者雇用の状況

今回は特例子会社に関する報告でした。委託している主な業務は、データ化、問い合わせに対するデータ照合、書類の発送などの事務がメインです。設立当初は、肢体障害と聴覚障害の方が主でしたが、下図の通り、年々精神・発達障害の方が増えている傾向にあるそうです。

合理的配慮

☟は、実際にこの特例子会社で行われている合理的配慮の実例です。

ハード面

バリアフリー、障害者用トイレ(ランプ表示)、手話通訳、UDトーク、パトライト、昇降デスク、広い通路など

ソフト面

専門支援員による相談体制、カウンセリングルーム、産業医面談、レストルーム、障害特性にあった食事ルーム、サポート役(世話役)、休暇・休憩、マニュアル、耳栓など

この特定子会社では、毎朝朝礼で各グループに分かれて5分間の手話学習に取り組んでいます。毎年、15名以上の職員(聴者)が手話検定に合格しているそうです。また、従業員全員にiPadが貸与されており、日常的にUDトークを利用することができます。

ソフト面では、障害者雇用定着支援の経験がある職員による相談をいつでも受けられたり、臨床心理士による相談を受けられるカウンセリングルームもあります。また、仕事について安心して質問できるように、あらかじめ従業員一人ずつにサポート役を決めているそうです。

面白いなと思ったのは、「障害特性にあった食事ルーム」の提供です。通常の食堂とは別に、昼休憩時には食事ルームとして会議室を開放しており、ここでは全員「私語禁止」だそうです。当初は、にぎやかな場面やコミュニケーションが苦手な従業員向けに始めたそうですが、今は障害の種別や有無に関係なく利用があり、会議室はいつも満席だそうです。

定着状況

現在、設立して19年目のこの特例子会社では、職員の定着率がとても高く、10年間の在籍率は90%にものぼるそうです。

大切にしていること

互いの障害や特徴を理解し、認め合い、支え合う風土作りを大切にしており、入社時に行われるグループワークでは、苦手なこと、配慮してほしいことを互いに伝え合うそうです。

また、仕事を細分化し、それぞれができる職務を担当し、全員で一つの業務を仕上げるやり方を実践されているそうです。

自分の障害や特性に合わせて、安心して働ける環境が整っているからこそ、さらなるステップアップを目指したり、新しい業務にもチャレンジしてみようと思う職員の方も多いそうです☺

2社目の会社情報

2社目の企業は、特例子会社はないものの、従業員1038名中、23名の障害者が働いています。この企業の特徴は、障害者の働き方として「テレワーク」が選択肢の一つとしてある点です。

テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。在宅勤務やサテライトオフィス勤務などがあります。 

実際、この企業では23名の障害者のうち、16名(身体障害者7名、精神障害者9名)が在宅勤務を行っているそうです。

テレワークの主な内容

・英文翻訳業務

・CAD業務

・図面のデータ化(PDF化)

・各種データ入力など

職場内のコミュニケーション方法として、週1回のWEB会議、臨時WEB会議、日常の連絡はメールやチャット、必要時に人事課による自宅訪問(相談など)、年1回の食事会などを行っています。

採用にあたり大切にしていること

この企業の場合、一般採用では通常2~3週間で内定が出るそうですが、障害者雇用の場合は、半年ほど時間をかけ、希望する勤務形態(通勤・テレワーク)に応じたインターンシップの実施、保護者との面談、トライアル雇用、人事面談などを行いながら、双方で丁寧に確認しながら決定するとのことでした。

さいごに

研修会では、企業報告の他に卒業生の体験発表もありました。その中で、ある発達障害の卒業生が就職にあたり、在学時から就労移行支援事業所に通い、ビジネスマナーやパソコン技術を学んだり、様々な企業で実習を行いながら、自分に合う会社をじっくり検討したそうです。そして、就業希望先にも自分が苦手なこと、配慮してほしいことを伝え、理解を得たもと、採用に至ったとの話がありました。

今回の研修会では、企業報告も、卒業生の体験発表も、あくまで手帳を持っている方が障害者雇用で就職した場合の話であり、手帳のない方が一般採用で就職した場合とは大きく異なる点も多々あります。

ただ、手帳の有無に関係なく、きこえにくさを補うための合理的配慮の工夫や個人に合った多様な働き方の選択が当たり前にできる社会になってほしいと切に感じます。