こんにちは、KIKOE LIFEです。
新型コロナウイルスによる外出自粛の影響により、オンラインでの会議や授業配信を行う機会が増えつつある中、難聴者にとって大きな課題となっているのが情報保障の問題です。例えば、従来であれば補聴器や人工内耳、補聴援助機器(ロジャーなど)などで聴覚情報を得たり、手話通訳や要約筆記などの情報保障を利用していたのが、オンラインではそれらを活用することが難しい現状にあります。難聴者に対する「情報格差」がより鮮明になってしまうのです。
今回は、「captiOnline」の音声認識機能を使って、オンラインで文字通訳を行う方法についてお伝えしたいと思います。
captiOnlineとは
captiOnline(キャプションライン)は、筑波技術大学産業技術学部産業情報学科 コミュニケーションサポート研究グループの若月 大輔先生が作成した、ウェブを用いてオンラインで文字通訳(要約筆記)を行うことができるウェブサイト(無料)のことです。アプリやソフトのダウンロードは不要で、パソコン、スマホ、タブレットからサイトのページにアクセスするだけで文字通訳を行うことができます。
captiOnlineで文字通訳を行う際の入力方法として、①タイピングによる連係入力と②音声認識による入力の2つがあります。今回は、特別な知識や技術がなくても利用しやすい②の使い方についてお伝えします。①については、詳しい解説がありますので下記をご覧ください。
captiOnline(音声認識)の使い方
captiOnlineを初めて使う方のために、お試しページがあります。まずは、このお試しページを使って、音声認識によるcaptiOnlineの使い方について説明します。
専用ページにアクセスする
GoogleChromeからhttps://capti.info.a.tsukuba-tech.ac.jp/にアクセスすると、☟のような画面が表示されます。お試し部屋のcaptiOnline3をクリックします。

アイコンを選ぶ
入力者(音声認識を使って発言する人)は入力者ページのキーボードアイコン(赤丸)、閲覧者(文字情報を見る人)は利用者ページのアイコン(青丸)をクリックします。

文字による連係入力はパソコン、スマホ、タブレットのいずれでも可能ですが、音声認識を利用する場合はパソコンで行ってください。ちなみに、入力者が見る画面はこのような感じです☟

閲覧者が見る画面はこのような感じです☟(入力者用画面の左上にある表出画面と同じものが拡大表示されます)

名前を設定する
入力者ページのパソコンアイコンをクリックすると下記の画面が表示されるので、お好きな名前を入力します。この名前は、チャットモードで音声認識を行う場合に発言者名として表示されるので、複数人でやり取りする際に誰の発言かがわかるためとても便利です。(チャットモードの説明については後程お伝えします)

マイクをパソコンにつなぐ
マイクをパソコンのマイク端子に接続します。パソコンの内臓マイクでも音声認識は可能ですが、音声認識の精度を高めるために別途マイクを接続することをお勧めします。今回私が使用したのは数百円のピンマイクです☟

下図のようなマイクのついたヘッドホン(イヤホン)を使うと、両手も使えて、かつ口とマイクの距離も一定になるのでいいかもしれませんね☟

ちなみに、captiOnline3を実際に使用している要約筆記者の方に伺うと、音声認識の精度を高めるために指向性のある高音質PC用ボーカルマイクを使っているとのことでした☟(5,000円くらいしたそうです)

音声認識を行う
赤丸で囲った三角マークを押すと音声認識が始まります。四角マークを押すと音声認識が止まります。音声認識された内容は左上の黒い画面に表示されます。

文字の表出方法を色々選択することができ、チャットモードにすると発言者の氏名が表示されます。

誤変換を訂正する
赤丸で囲んだ箇所で、誤変換部分をタイピングで修正することができます。修正された内容は即時に反映されます。

音声認識はどうしても誤変換が生じてしまうので修正する作業が必要ですが、captiOnlineは修正方法がシンプルでとても使いやすいです!
ログを保存する/消す
赤矢印のボタンを押すと、表示された文字をテキストとして保存したり消したりことができます。

文字の大きさや色を変更する
赤矢印の設定ボタンを押すと、文字の大きさや色の変更をすることができます。

専用部屋を作る
お試しページを使って、音声認識による文字表示の基本的な使い方について説明しましたが、お試しページでは複数人が同時に画面を共有することができません。なので、実際に会議や授業などで利用する際は、専用部屋の設定が必要になります。専用部屋を作ることで、該当するURLにアクセスすれば、複数人で同じ画面を共有することができます。専用部屋の作成依頼は筑波技術大学の若月大輔先生までお問合せください。

https://capti.info.a.tsukuba-tech.ac.jp/で専用部屋一覧を見ることができます☟

SkypeでcaptiOnlineを利用する
では、会議などオンライン時の使用を想定して、Skypeと一緒にcaptiOnlineを使う方法についてお伝えします(まずはcaptiOnlineの専用部屋を作ってもらう必要があります)
Skypeを立ち上げる
Skypeを立ち上げて、デスクトップの半分くらいの大きさに縮小しておきます。

captiOnlineの画面を並べて表示する
Skype通話に参加する人は、https://capti.info.a.tsukuba-tech.ac.jp/から該当する専用部屋を探し、captiOnline3をクリックします。パスワードを聞かれるので、指定のパスワードを入力してください。通常、講演会などの要約筆記場面でcaptiOnlineを使用する時は、閲覧者用画面と入力者用画面をそれぞれ利用しますが、オンライン会議などでは、難聴者自身も会話に参加する機会が多いと思うので、開くページは全員入力者ページでOKです。(あくまで個人的な見解です)
文字表示を見やすくするために不要なパネルは非表示にします。下図の赤矢印のボタンを押すとパネルの開閉が表示されます。それぞれのパネルをクリックすると非表示にすることができます。今回は音声認識のみを使うので、赤丸で囲んだパネル(表出、音声認識、文訂正)以外をクリックして非表示にしてください。

captiOnlineの画面を縮小してSkype画面と並べて配置します。表出、音声認識、文訂正のそれぞれのパネルの大きさや位置は変更できるので、見やすいように調整してください。

これで準備はOKです!あとは、captiOnline(音声認識)の使い方でお伝えした手順に沿って行ってもらったら大丈夫です。
実際の画面
実際にSkype通話をしながらcaptiOnline(音声認識)で文字表示を行った様子がこちらです☟今回は、SkypeとcaptiOnlineの画面配置を横並びにしていますが、見やすいように個人で工夫してみてくださいね。

さいごに
captiOnlineは、大掛かりな準備も不要で、専用部屋のURLにアクセスした人全員が同じ画面を共有できる、とても便利な仕組みです。議事録や板書の代わりとしても代用できるので、難聴者だけでなく、すべての人にとっても便利な仕組みと言えます。聞こえにくさがあっても聴者と同等の情報を当たり前に得ることができるように、情報保障の一手段としてcaptiOnlineをぜひ試してみてくださいね。