APD

APD(聴覚情報処理障害)当事者が生きやすい社会を築くためにできること

こんにちは、KIKOE LIFEです。

2019年12月1日(日)に大阪で行われた「近畿APD講演会」に参加しました。講師は、亀戸小児科耳鼻咽喉科(東京都)でAPDの診療を行っている耳鼻科医 平野浩二先生です。今回は、平野先生の講演内容の中からいくつか抜粋してお伝えします。

APDの代表的な症状

APDの主な聞こえ方は下表のとおりです。

●騒音下での聞き取りが悪くなる

●複数の人に話されると、どちらも聞き取れない

●横や後ろから話をされると聞き落す

●生声に比べて電話や無線などが特に聞きづらい

●話し手のスピードが早いとついていけない

★聴力検査では問題がない

難聴の場合も同様の症状が表れるため、まず第一に通常の聴力検査で問題がないかどうかが重要になります。

通常の聴力検査とは純音聴力検査(ピッピッと聞こえたらボタンを押す検査)をさします。また、語音明瞭度検査(「あ」や「し」など、20個の単音節を聞き、何%正解したかによってことばを聞き分ける力を調べる検査)も併せて行っている病院もあります。どこを受診したらいいかわからない場合は、補聴器相談医の名簿を参考にしてみてくださいね。

APDに関する問題点

APDに関する問題点として下記を挙げられました。

●APDを知らない耳鼻科医が多い

●APDを診断できる耳鼻科医が少ない

●APDの患者数がとても多い

●APDを自覚していない人が多い

●完治する方法がない

●発達障害の方の半分くらいにAPDが合併している

平野先生曰く、国際医療福祉大学などでは、APDの子どもに対してトレーニングを行い、一定の効果をあげているそうですが、学校や仕事があったり、遠方に住んでいる場合は、度々トレーニングに通えないという問題点があるとのことでした。

できるところを伸ばせる社会を

平野先生の講演の中で印象に残った話が二つあります。そのうちの一つが『その人のできる部分を伸ばしていこうという社会になってほしい』というものです。

平野先生は講演の中で、「発達障害=凸凹(でこぼこ)障害である」とおっしゃられていました。つまり、すごくできるところとできないところがあるため、そのアンバランスさによって様々な問題が生じてくるということです。

特に、日本社会は良くも悪くも『平均』を求める意識が強く、できない部分をなんとか伸ばそう伸ばそうとするため、それが生きづらさを生む大きな要因になっているとのことでした。「欧米などのように、できるところをさらに伸ばして、自分のできることで会社や社会に貢献したらいい。できないところを何とかしようとあまり追求しすぎない方がいい」とおっしゃられていました。

以前書いた障害者雇用に関する記事の中でも触れていますが、自分の特性に合った安心して働ける環境があってこそはじめて、新しいことへ挑戦しようという気持ちも芽生えてくるのだと思います。「その人が持っている良い面を育てていこう」という考え方が当たり前のこととして社会に広まれば、どんなに生きやすくなるだろうとつくづく思います。

当事者会の役割

そしてもう一つ、平野先生のお話の中でとても印象に残ったのが、「当事者会の役割について」です。

●医者が指導できることは少ない

●受け身ではなく、APDをAPDが支える(ピアカウンセリング)

●全国各地に(できれば各都道府県に1つ)APD当事者会をつくる。そして、それらをたばねる全国組織の設立を期待する

平野先生は、高校2年生から手話サークルに入り、大学時代は手話通訳者としてろう者と関わってこられた経験から、「ろう者の場合、ろう者自身が社会を変えるために自ら努力してきたからこそ今がある。手話通訳者はあくまでバックアップする役割。APDも同じ。社会を変えるためには当事者の声が一番大事」とおっしゃられていました。

また、平野先生はAPDの啓蒙活動にも力を入れておられ、耳鼻科医だけでなく、精神科医や小児科医など、発達障害の専門家にもAPDの理解を広め、みんなでAPD当事者のサポートを行っていける社会を目指したいと話されていました。