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新生児聴覚スクリーニング(NHS)の現状と課題【求められる在り方とは?】

こんにちは、KIKOE LIFEです。

生まれつき難聴のある赤ちゃんは1,000人に1~2人と言われており、その数は他の先天性疾患と比べても高い頻度です。しかし、全児を対象とした新生児マススクリーニング検査と異なり、新生児聴覚スクリーニングは全ての赤ちゃんに義務付けられていないため、受検率や検査費用に対する公的補助など、市町村で取り組み方に差があるのが現状です。

今回は、2020年12月13日(日)に行われた「新生児聴覚スクリーニングシンポジウム」の内容もふまえ、新生児聴覚スクリーニングの現状と課題についてわかりやすくお伝えしたいと思います。

新生児聴覚スクリーニングとは?

新生児聴覚スクリーニング(NHS)とは、生後間もない赤ちゃんを対象とした聴力検査のことで、難聴を早期に発見し、適切な対応や支援につなげる目的で実施されています。

産婦人科医が主人公の人気漫画『コウノドリ18巻』にも新生児聴覚スクリーニングが登場します

なぜNHSが必要なのか?

聞こえにくさがあると、どうしても言葉の発達(語彙力、言語力など)に大きな影響を及ぼします。難聴を早期に発見することで、補聴器や人工内耳、手話など個々に合ったコミュニケーション方法を活用しながら、言葉の発達を促していくことができます。

また、難聴児の90%は聞こえる両親のもとに生まれるため、難聴のある我が子をどう受け止め、どう関わっていけばいいのか、親が抱く不安は計り知れないものがあります。できるだけ早期に難聴を発見することで、対象児だけでなくその保護者に対するフォローもあわせて行うことができます。

検査の種類について

新生児聴覚スクリーニングに用いる聴覚検査は、自動聴性脳幹反応(AABR)と耳音響放射(OAE)の2種類があります。

結果について

AABR、OAEともに検査の結果はパス・リファー(要再検)で表されます。

NHSリファー後の流れ

新生児聴覚スクリーニングでリファー(要再検)が出た場合、各都道府県にある精密聴力検査機関でより詳しい検査を行います。精密聴力検査の結果、難聴が確定した場合は、療育・教育施設と連携しながら対象児やその家族への支援を行っていきます。

NHSの結果は100%正しいわけではない

先天性難聴児は1,000人に1~2人の割合で生まれますが、新生児聴覚スクリーニングではどうしても偽陽性が生じてしまうため、1,000人の赤ちゃんに対し約4人にリファーの判定が出ます。そのため、新生児聴覚スクリーニングでリファーが出る=難聴と確定したわけではなく、精密聴力検査機関で詳しい精査が必要になります。

逆に、新生児聴覚スクリーニングでパスの判定が出ても、その後中耳炎による難聴、髄膜炎やムンプス(おたふく風邪)罹患による難聴、先天性サイトメガロウイルス感染、前庭水管拡大などの進行性、遅発性難聴が生じる可能性があります。

新生児聴覚スクリーニングはあくまで新生児期の聴力の状態を示すものであって、新生児聴覚スクリーニングがパスであっても、普段の聞こえやことばの様子を観察し、乳児健診、1 歳6か月児健診、3 歳児健診などでも聴覚の評価を十分に行うことが大切です。

新生児聴覚スクリーニングについては下記のマニュアルがとてもわかりやすいので参考にしてくださいね。

NHSの現状と課題

新生児聴覚スクリーニングを行う産科施設数は年々増加しており、2016年の調査では94.3%の施設で検査の実施が可能になっています。また、2017年4月に産婦人科診療ガイドライン(産科編2017)で新生児聴覚スクリーニングの推奨度が上がったため、現在はさらにその割合は上昇していると考えられます。

しかし、検査可能施設率が増加する一方で、新生児聴覚スクリーニングは様々な課題も抱えています。

課題①市町村で受検率がバラバラ

新生児聴覚スクリーニングの検査実施率は自治体によって大きな差があり、2017年の調査では、12.4%の児が検査を受けていない状況にあります。

課題②公的補助がないもしくは一部補助の市町村が多い

新生児聴覚スクリーニングは自費診療であるため、その検査費用は自治体によってばらつきがあります。

検査費用の公的補助実施率は年々増えていますが、全額ではなく一部の補助にとどまる自治体が多いため、多くの場合で自己負担が生じてしまいます。未受検の背景には、経済的な理由で検査を受けられない場合も多数含まれていると考えられています。

課題③OAEを使っている施設が約3割ある

OAEは機器の購入費用やランニングコストがAABRに比べて安いため、OAEを用いている施設が全体の約3割を占めています。

しかし、OAEではその仕組み上、聴神経の異常を検知することが困難で、さらにAABRに比べリファー率が高い(=偽陽性率が高い)という問題があります。

平成28年の厚生労働省の通知でも、新生児聴覚スクリーニングはAABRで行うことが推奨されています。

課題④NHSに対する医療者側の理解が浸透していない

医療者側においても、新生児聴覚スクリーニングがなぜ必要なのか、結果説明時にどのような配慮が求められるか、リファー児やその保護者に対してどのようなフォローが大切かなど、まだ十分に理解が浸透していないという課題があります。

NHSの望ましい在り方とは?

日本産婦人科医会は国に対し、下記の要望を提出しています。

①市区町村単位では精密検査や療育は完結できないため、市区町村単位でなく、都道府県単位の協議会を中核として事業を行う必要がある。また、都道府県の協議会の間で情報交換するシステムの構築が必要である。

②すべての児が早期に適切な検査を受けることができるように、新生児スクリーニング検査の無料化、AABR購入の支援が必要である。

新生児聴覚スクリーニングは、難聴が発覚した児に対して適切な療育につなぐこと、そして様々な不安を抱える保護者をサポートすることに大きな意義があります。誰もが必要な支援を受けることができる仕組みが整うように、今後も情報発信を続けていきたいと思います。

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